« 捨てる日(3) | トップページ | 革命 »

2009年11月 5日 (木)

振込手数料論

 さて、たまに書いている「仕事について掘り下げて一般論を書く」シリーズですが、今日は振込手数料について。

 通常、振込手数料というものは、消費者として生活している分には、あまり振込をすることなく、たまにするとすれば、「振込手数料、もったいないな・・・」と思いつつ、結局は自分で負担してしまうというものです。

 いや、もちろん、一般消費者の立場でも、振込手数料を差し引いて振り込むこともあるでしょうし、ちゃっかりと引いている方もいらっしゃるでしょうし、例えば生命保険料なんかを何らかの理由で振り込む場合(例えば、第1回の分とか)、「振込手数料を引いてください」と指示されることもありますし、やっぱり引いてしまうこともあります。

 これが、会社の支払となると話は別で、そんなもの、全部負担していたらかなりの額になるし、かといってものによっては引けない、でも引きたい、となることも多いようです。

 これについて、果たして振込手数料が送金をする側が負担するか、送金を受ける側が負担するかということを議論してたら、場合によっては喧嘩になるぐらい見解が分かれるところだと思います。それぞれに言い分もあり、何とも言えない部分です。

 例えば、引くべきという見解。
 ・この取引で利益を得ているのだから、それぐらい負担するのは当然だ
 ・領収書を発行しないので、印紙代は浮いているはずだから、振込手数料は持つべき
 ・集金に来る手間が省けているのだから、振込手数料は負担すべき

 引かないという見解
 ・そもそも全額振り込まれないのだから、債務不履行である
 ・支払う側が持つのが当然だ

 とまあ、最後はちょっと強引に書きましたが、どっちかに偏った考えの場合は、引くこと・引かないことが当然だと思っているようで、なかなか、これについては全国・全業種統一の見解は出ないと考えられます。

 おそらく、地域によっても「常識」に差が出てくることもあり、あるいは業種によっても差が出てくることだと思います。

 また、振込手数料を差し引かれて入金を受けた場合、営業担当者の方が怒りを感じるが、経理担当者は機械的に処理をする(値引処理・費用処理、どっちが妥当かはここでは検討しない)ことが多いという話は聞きます。確かに、経理担当者としては、いちいち振込料を差し引かれたからと言って目くじらを立てていては仕事になりません。

 その中で、なるほどと思われる話を聞いたことがあるのが、契約により持参して払うことになっているもの(家賃など)は、送金側の負担、集金すべきものを振り込んでいる場合は受け取る側の負担・・・。

 確かに、そう言われてみれば、家賃なんかでは絶対に引かない、ということと整合する話です。

 とは言っても、遠方から商品を送付してもらう通信販売の場合は?、旅行業者にはある話なんですが、顧客が旅館に泊まってきて、本来は顧客が現場で支払ってくるべきものを、そのお金を旅行業者が収受して、あるいは収受する前に立て替えて、それを事前あるいは事後に振り込む場合は?などなど、このひと言で割り切れるかと思えば割り切れない部分もあるようです。

 ともかく、この、あえて名をつけるなら(以下同じ)「支払い方法契約基準」というのも一つ、あるような気がします。

 次に見かけるのが「請求金額3万円未満(あるいは以下)の場合の振込手数料差引はご容赦ください」という表示。中には請求金額が3万円未満(以下)になったら自動的に表示される請求書システムもあるようです。

 これは、領収書に印紙を貼る金額との整合性も(以下・未満の厳密なところはおいといて)あるような気がします。領収書の印紙代がかからないから振込手数料を差し引くべきだという根拠の反対解釈で、本来、印紙が不要なら、振込手数料は支払う側が持つべきだという理屈になると思います。

 あと、振込手数料を差し引いても利益(粗利益・売上総利益)がある程度残るという意味でのおおよその線引きということもあり得るのかも知れません。ともかく、「金額基準」という線引きも世の中には存在するようです。

 あとは、支払う対象によって、例えば組合費・会費などは差し引くのはタブーとされている部分もあるようで、前職でいくつかの企業を見ていても、ほとんどの支払では振込手数料は引いているのに、家賃と組合費だけは引いていない、というところもありました。つまり、「支払対象基準」というのもあると思われます。

 その他に、「支払対象基準」の変形版で、この業界なら引かないのが普通、この業界なら引くのが普通、という、「業界の掟」のようなものも存在していると思います。

 ただし、この場合は、その業界以外から見ると非常にわかりにくい部分でもあります。実は、旅行業というのは、多くの場合「振込手数料はご負担ください」という意味の文言を請求書に書いてある場合が多いわけです。

 その業界の収益構造上、振込手数料を差し引かれると利益が減ってしまい、経営状況に与える影響が大きい、しかしながら、振込手数料を価格に転嫁できないという業界も多いわけで、その場合は自然と「振込手数料を負担してください」という意思表示を行うのが業界内で一般化してきているのだと思われます。

 ちなみに、旅行業の場合、例えばJR券・航空券のみの場合で、振込手数料を差し引いた瞬間、粗利益がぶっ飛んでしまって、振込手数料を加味した粗利益がマイナスになってしまうという請求書も存在するのは事実です。かといって、それを加味した価格設定ができない(つまり、券面金額が決まっている)事情もあり、そういう意味で、業界内でのこの表示が一般化しているのだと思います。

 この中には、例えば旅行業のように業界内で自然にある程度統一されている場合(そう表示していないところも多いと思うので断言しません)と、通常、差し引きすることが多く、場合によっては「引いてください」と向こうから案内されることがあるという業界なのに、ある会社は「振込手数料はご負担ください」という場合があります。

 というわけで「業界基準」「意思表示基準」という基準が存在していると考えられます。なお、先に挙げた「支払金額基準」は、「三万円未満なら引くな」と言っている場合は「意思表示基準」とも言えるでしょう。

 とまあ、通常の場合は、支払う側の場合は、会社で方針を決めて、差し引かないとした場合はそれで何も考えなくてもいいし、「基本的に差し引く」とした場合は、「支払内容基準」(家賃・会費など)と「意思表示基準」さえ守っていれば、特に問題はないものと考えられます。ただし、振込を受けることになれてない業者の場合は、意思表示していないのに、「振込料分足りないから振り込め」と言われることもあり得るかも知れません。

 とりあえず、振込料を差し引く場合は、必ずしも機械的に、すべて差し引いていてはならないということ。ある経理の本には、差し引くのが当然だ、それもいちいち振込料を考えずに840円引いてしまうという方法もある、と書いてありましたが、個人的には賛成しかねる内容です。

 というのが一般論。つまり、振込料を差し引く・差し引かないというのは統一した見解はないということと、その中でもあえて基準を考えるとすれば上記のようにいくつか考えられるが、それらを総合したからといって、絶対的なものでもないということです。

 ちなみに・・・。旅行業の支払の場合、これが非常にやっかいな問題になっていまして、まず、「業界基準」というのが一つ、大きく横たわっている訳です。「業界によって振込料を引く・引かないなんてそんな判断聞いたことない、アホらしい」と思われた方もいらっしゃったと思うのですが、実は旅行業での支払の場合、まずこの判断が重要になってきます。

 支払先が「旅行業」というくくりでなく、「温泉旅館」「ホテル」「貸切バス」「航空券」「大手旅行会社」「飲食店」などなど、多岐にわたっており、あえてどれがどれとは書きませんが、この中に「普通は振込手数料を引いても問題ない」という業界と「振込手数料を引いたら間違いなく差額を請求され、それも振り込まないとサービスは受けられない」という業界があるわけです。

 そして、「振込手数料を通常は引く」という業界の中で、いくつかの業者は請求書に「振込手数料はご負担ください」と明確に意思表示をしている訳です。

 そういうことで、実は、旅行業者として支払をする場合で「すべて振込手数料は当社が持つ」と決めない限り(ただし、旅行業の収益構造上、なかなかできることではない)、振込手数料を引いてもいいの?ダメなの?という判断がいつもついて回るわけです。

 そういう業界の事情を知らず、ある本で「差し引くのが当然だ、それもいちいち振込料を考えずに840円引いてしまうという方法もある」なんて書かれてしまうと、「知らないのに適当なこと書きやがって」と思ってしまうわけです。そんなことしていたら、海外航空券の予約を取り消されてしまいます(笑)。

 ということで、振込手数料は全部こっちで持つという大盤振る舞いもできないとなると、

 1.まずは請求書に明確な意思表示がないか確認→あれば業界にかかわらず、従う
 2.その上で、ある程度業界ごとに決めた基準で、振込手数料を引くかどうか決める(ただし、どれがどれかはここでは書きません)
 という考え方になってくるかなと思います。

 なお、可能な場合は
 3.実際に差し引くとすれば、利用可能な送金元金融機関と送金先金融機関の組み合わせの中で、振込手数料が最も安くなる組み合わせを考える

 という手順を踏むのも悪いことではないと思っています。(と他人事のように書いていますけど、実際にやっているんですが・・・)。これについては、経理の手間が増えるだけで、賛成できない方も多いと思われます。しかしながら、例え差し引く場合でも、最低限度の負担だけご協力頂くというのも心遣いの一つではないかと思っています。(このへんは先に挙げた(ただし実名は挙げない)経理の本とは大きく見解は異なるところです。)

 いやほんと、3つの銀行・信用金庫の法人ネットバンキングの振込手数料(同行・他行・三万以上未満)が頭の中に入っていますもん・・・。微妙に違うんですよね。

 というわけで、後半は一般論というより個別の話になってしまいましたが、実は通常の業界よりも神経を使うことの多い話なんで、あえて具体例として書いてみた次第です。

|

« 捨てる日(3) | トップページ | 革命 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 捨てる日(3) | トップページ | 革命 »