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2010年2月 6日 (土)

いつの売上?

 と、夜になってしまいました。

 毎週土曜日恒例の、「面倒な話」シリーズです。えっとですね、今日は、経理の話の、ちょっと奥深いというか、専門的なようなそうでもないような話を書きます。「経理の話」というより、「会計の話」です。

 つくづく、自分は、決算書(財務諸表)を見る側じゃなくて、作る側の人間だな、と思うわけですが、それも、大企業の、一般的に公開されているやつじゃなくて、中小企業というか、小企業のやつです。それで、この会社は危ないのか儲かっているのか、という目では決算書が見られないわけで、どうやって作っているんだろう、ということに目がいってしまって、決算書(財務諸表)を見ると、注記とか、変わった科目とかに目がいってしまいます。

 それはそうと、今回の話。売上○○(億)円、って書いてあるけど、じゃあ、売上って何?という話です。といっても、旅行業のように、会計方法、つまり総額と純額で「売上」の意味するところが大きく変わってくるという話じゃなくて(それはそれで面白いのだが、今日のお題ではない)今入ってきたお金は今期の売上ですか?翌期の売上ですか?という話です。

 つまり、「収益の計上(認識)基準」という話になるんですけど、いつの時点で「売上」とするのか(これを「認識する」といいます)という話を書いてみようかと思うんです。

 といっても、会計の専門の話だけをしても面白くないんで、例によって、一般的なことを書いたあと、そんな「一般的な話」は、特に旅行業なんかじゃ話になりませんよ、ということを書いて、あとはこのブログらしく、たまにも鉄道業の話に持って行こうかと思っております。

 どっちにしても、中小企業の会計しか知らない者が書いているんで、大企業の方やら、会計監査の業務に携わる方が御覧になると、ものすごく変な話を連発していると思うんですけど、ご容赦下さい。あくまで、中小企業の経理担当者の目、ということで。

 そんなわけで、例によって興味のある方だけ、続きをどうぞ。なお、この記事だけ単独表示にしている場合は、そのままこれより下に本文が表示されています。

●一般的な話
 いつの時点で売上とするか(収益を認識するか)という話。一応、ある時までは「収益の確実性と金額の客観性が認められた時点」、ある時からは「財貨・用役の引渡と、それに対応する貨幣性資産を受領した時点」なんていうことを、試験勉強で習いました。(と書いた段階で、どっちの学校か分かる人もいるんですけどね・・・)

 とりあえず、そんなことを書いてもしょうがないんで、会計学って、まずは物品販売業を前提とするんで、要は品物を引き渡した日が売上なんです。簡単ですね?、と終わるわけです。確かにね、スーパーとかなら簡単なんですよね。お客さんがレジまで品物をもって来てくれて、お金を置いていく。棚から出した時と、レジを通ったときのタイムラグがあっても、別に、そこまで考えなくてもいいし、レジを通れば売上。その時点で「棚卸」の対象でなくなります。

 ただ、そうともいえなくなってくるものもでてきまして、物品販売業を営んでいる会社の倉庫から(1)品物が出ました。(2)先方へ向けてトラックに積み込みました。3日かかって先方に到着し(4)先方の敷地に入りました。(5)先方の倉庫に入りました。翌日(6)先方の検収を受けました。さて、いつの時点で売上になるでしょうか。もちろん、これ、普段ならいいんですけど、その間に決算日が挟まっていると、訳が分からなくなるんですよね。

 と、これは考えていても答えが出ないんですけど、「出荷基準」とか「引渡基準」とか、「検収基準」なんていうものがありまして、どの時点で売上にするか、各会社で決めてしまって、それを継続して適用すればいいわけで、その都度考えて操作してはいけないという話です。

●一般的な話2 
 では、特殊な売り方をしている場合はどうでしょうか。例えば、試用販売とか割賦販売とか、委託販売とか・・・、なんていうことを書くと、こういう会計の勉強をした人は「あー、この話か」ということになるんですけど、まあ、これも各形態に応じて、原則とか例外とか選択適用みたいな感じで方法があります。書き出すと面倒なんで書きません。

●一般的な話3
 では、物を仕入れてそのまま売る商売じゃなくて、あと、製造業も考えてみてもそんなに考え方に大差が無いんで、何年もかかって建物を建てている会社があるとします。さて、いつ売上になるの?

 で、またこの話か、というベタな流れなんですけど、これはちょっと前に会計基準が出来てしまいましたもんね・・・。

 一応、「工事が完成し、引渡が完了した日」に売上が上がる(工事完成基準)という訳ですが(それまでにかかった材料代やその他経費・人件費は在庫になる)、「決算期末に見積もられた工事進行程度と適正な工事収益率を用いた方法(工事進行基準)」も認められる、というのが古い言い方。新しい言い方は「工事契約に関する会計基準」によれば「工事契約に関して、工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用する」というわけです。ちなみに、請負で制作する会計ソフトもその適用を受けます。

 まあ、要するに、建物が出来上がらなくても、いずれ完成して、お金がもらえることが確実なら、仕事をした分だけ、決算書上、売上にしましょうよ、じゃないとどれだけ業績を上げたか分からないでしょ?という訳です。

 と、一般的な、教科書に書いてあるような話、もういいですかー。ほんとはそんなこと書きたくないんですけど、それを書かないとこれ以降の話が出来ないんで書いたわけです。

●サービス業は?
 一般的に、会計の話を考えるときって、現物がある、つまり物を仕入れて売る商売を前提にしてしまいます。それで「在庫の重要性」とかにページを割くわけです。

 また、そうなると、基本的に請求書が出てくるのは、納入した商品に対する物だから、請求書が出る=売上が計上され、売掛金が計上される、ということである、なんていう説明がされるわけです。

 じゃあ、物がない商売。サービス業はどうなの?という訳ですが、一応、一般的なサービス業までは、この一言で済みます。

 「役務提供完了基準」

 つまり、仕事をして、仕事が終わったらお金を請求できるし、その、仕事が終わったときに売上を計上しましょうよ、という方法です。これで、大部分のサービス業はカバーできます。物が動かなくてもいい。仕事が終われば売上だ・・・。

 でも、世の中にはそうでもない商売もあり、例えば、年○○円で見守ってくれている商売とか、何かあったら駆けつけてくれるとか・・・。まあ、詳しいことは書きませんが、「時間基準」「現金基準」という方法がありまして、なんとなくそのへんでカバーできます。

●じゃあ、旅行業
 ということで、自分の関わっている仕事に話を進めるんですけど、自分の会社はどうやっているのか、というのはあえて触れません。触れてもいいのかと思うんですけど、一応、そのへんの「触れてはいけないこと」のラインはかなり高めに設定しているんで、具体的には書かないですが、一応、モノによっていくつかの基準を設けているのは確かです。その基準はしっかり決算書に「注記」してあります。それぞれ、根拠もお話出来るぐらいの理論構築は、頭の中でしていますが、ちょっと迷っている部分もあるんですが・・・。

 さて、とにかく、旅行業もサービス業なんで、「仕事が終われば」売上には変わりないんですけど、じゃあ、どの時点で仕事が終わったというのか・・・。

 団体旅行なら、本来なら(意味深)帰ってきた時点でしょうし、きっぷの手配なら引き渡した時点かな?。となると前者なら「役務提供完了基準」、後者なら「引渡基準」?

 ということで、自分の会社の例を出さずに、公開されている情報を出しますが、「近畿日本ツーリスト株式会社」の財務諸表の個別注記表からの引用。

 「各種旅行券取扱手数料については発券時に計上し、団体旅行取扱手数料については旅行終了時に計上しております。」

 まあ「取扱手数料」という表現はおいといて、「きっぷ」って、出発日で売上をあげると非常に面倒なんですよね。で、そんなもん、きっぷを用意したときに、その人のために用意するんだから、基本的に売れるのは決まっている(キャンセルもありうるが・・・)、ということで「発券日に計上し」という基準も存在してしまうわけです。

 という方法なら、きっぷの現物が用意できれば、もう売上になっているわけで、きっぷの現物があって、それを引き渡さないまま決算日になった場合、そのきっぷは「在庫」という表現じゃなくて「売ったもの」なんですよね・・・。

 また、この会社の例では、団体旅行の場合は、旅行終了時に売上になるという方法。その前に払ったお金は、多分、「前払金」だし、受け取ったお金は「売上」じゃなくて「前受金」になると思います。(実際はどういう処理をしているか知らないですけど、旅行にいく前にお金の収受があった時点では「売上」にならないことになります。)

 そんなわけで、「売上」って、どこかで線引きをして、その基準に満たした日になったかどうかで「売上」になるか、お金をもらってしまったんだったら単なる「前受金」になるかが決まってしまうわけです。もちろん、その基準に満たした日にお金をもらっていなくても「売上」なわけです(その場合は「売掛金」ないし「未収金」)。

 その基準も、実際に管理できるかどうか、というのも一つのポイントになってくるわけで、とにかく、目に見えないモノを仕入れて売っている商売って、売上を上げる基準もちょっと頭で考えないとダメなのです。

 だから、実際にその業種の会計に関わってみないと、実際のところは分からないので、そこまで来ると会計の素人か、他の業種の会計のプロか、ということは問わないのですが、目の前で受けているこのサービス、いつの時点で売上になることが考えられるだろうか?もし、いま自分が考えた方法だとすれば、どうやって管理しているのかな?、会計システムはどうやったら出来るかな?っていうのを考えるのも楽しいと思います。

 意外とこのへん、「収益の認識基準」が単純明快な商売の会計だけを見ていると、そんなに考えが及ばないところなんですよね・・・。中小企業の会計を何社も見ていても、下手をするとそんな考えに及ばないこともあるぐらいですし。

●じゃあ、鉄道業
 ということで、次に考えたのが鉄道業。なんか、そのへんの基準をバチッと「注記」してある決算書がネット上にないかと思ってJR各社のを見ていたんですが、いまいち、そのへんを突いてあるのも見あたらず(全社見た訳じゃないですが・・・)。

 というのも、例えば、きっぷなんて、いつの時点で売上が上がるんだろう、ということ。回数券もあれば定期券もある。1年間の売上(運輸収入)が××円です、といっているんですが、じゃあ、3月31日に定期券を買ったら(売ったら)どうなるんだろう。実際に乗るのは「来期」がほとんどですよ・・・。

 もちろん、売るきっぷが年間に100枚ぐらいだったら、実際に乗った日(役務提供完了日)に売上を上げればいいし、夜行列車だったら、列車から降りた日(役務を完了した日)に売上だし、定期券だったら、期間按分か・・・。回数券には番号を入れて、使った日に売上に上げればいいし、(実際にお金をもらった分で使っていないものは前受金ね)でも、これ、現実の鉄道業者を見ていると、そんなこと出来るはずもないし(実行可能性の問題というやつ)、やっているとも思わないし、やる重要性もないし・・・。

 で、いろいろ検索をしていたら「新日本有限監査法人」さんのサイトに、一部ですけど、かなり詳しく載っていたんでリンク。
http://www.a2msn.jp/portal/essential/rail/03/story/01.html

 定期券の場合、1ヶ月なら売ったときの売上、3ヶ月・6ヶ月なら期間按分らしい・・・。きっぷや回数券の場合は売ったときに売上だが、利用日が決まっている指定券の場合は、運行日に売上計上。などなど。(あとICカードの話もありますが省略)

 もちろん、これは「会計基準」じゃないんで、日本全国すべての鉄道会社がそうやっているとは思わないわけで、各会社ごとに基準を作っていると思うのですが、一つの例として、そういうやり方もあるんだな、と思って見ていました。

 要するに、実行可能性の問題もあって、短期間に使用されることが確実なら、きっぷを売ったときが売上(役務提供完了基準よりも早期に売上が計上される)という訳みたいです。

 ということで、「物を仕入れて売る」だけが商売じゃないんで、商売の形が変わると、売上をいつ上げるの?という問題がついて回るという話でした。

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